本格水冷はパーツの組み合わせ・配置を自由にできる反面、どのビルドにするのが良いか迷う点も多くあります。
前回のExtraⅡでは冷えない原因をご紹介しましたが、今回はラジエータファンの取付向きがPush方向とPull方向で、どちらが冷やせるのかご紹介しようと思います。
Push方向
ラジエータに対して風を吹き付ける方向に取り付けるのがPush方向。
多くの人がPush方向で取り付けてるのではないでしょうか。
LEDで光るファンは吸気面でないとイルミネーションが見えないモデルもありますし、排気面はケーブルや軸を固定する4本のシャーシが見えてしまうので、見栄えからの理由が強いように思います。
稀にPushのが冷えるという意見も見かけるので、冷却力の観点からも選ばれてるのかもしれません。
Pull方向
ラジエータに対して風を吸い出す方向に取り付けるのがPull方向。
メーカーによってはファンの両面でイルミネーションが楽しめるモデルもあるので、ラジエータをフロントに設置する場合はPull方向に付けてファンのLEDを見せたい場合もあります。
Push VS Pull 検証
本当はPull方向で取り付けたいけどPush方向のが多く見かけるからそっちのが冷えるのかも?とか
光るファンは使わないからとにかく冷える方向で取り付けたいけどどっちがいいの?など
迷っている人もいると思うので検証してみました。
検証環境
OS | Windows10 May 2019 Update(Ver 1903) |
---|---|
マザーボード | GIGABYTE Z370 AORUS Gaming 7 |
CPU | Intel Core i7 8700K(殻割 + 銀王) |
CPU水枕 | EK-Velocity D-RGB - Nickel + Plexi(PPCSカスタム版) |
CPUグリス | Thermalright TFX |
GPU | NVIDIA TITAN X Pascal |
GPU水枕 | EK-FC Titan X Pascal - Acetal+Nickel |
GPUグリス | Thermal grizzly kryonaut |
ラジエータ | 360mm x 12mm x 60mm |
ラジエータファン | 12cm x3(1200rpm固定) |
ポンプ | EK製 D5 最大揚程3.9 最大流量1500L/h |
メモリ | T-FORCE XCALIBUR RGB DDR4-4000 8GBx2 |
ストレージ | SANDISK Ultra 3D SSD 250GB |
電源ユニット | Seasonic FOCUS Plus Platinum 850W |
ケース | STREACOM BC1 Open Benchtable |
上で紹介した写真のとおり、ファンの取付向き以外は同じ状態。
水冷ループはポンプ→CPU水枕→ビデオカード水枕→ラジエータ→リザーバの順です。
OC設定
両者に差があるなら発熱量を増やせばより顕著になるのではないかと思い、オーバークロックしています。(なお、メモリは水冷化していないので関係はありません)
CPU | 5.2GHz |
---|---|
Uncore | 4.7GHz |
Vcore | 1.470V |
VCCIO | 1.250V |
VCCSA | 1.350V |
LLC | Extreme |
MEM | 3800MHz |
Timings | 19-18-18-39 |
DRAM Volt | 1.400V |
GPU | 2076MHz(+210) |
GPU MEM | 5454MHz(+450) |
POWER TARGET | 120% |
GPU Volt | 1.063V |
レギュレーション
・室温25.0℃
・温度計測はHWMonitor 1.40.0読み
ベンチマークタイトル
・CINEBENCH R15
・Geekbench 4
・FireStirke 無印/Extreme/Ultra
・TimeSpy 無印/Extreme
・ファイナルファンタジーXIV 漆黒のヴィランズ
Pull方向でゲームベンチを走らせた一例
Push方向でゲームベンチを走らせた一例
検証結果
結果としてはPushとPullで勝ったり負けたりな状態であり、その差も1℃なので誤差とみなせるでしょう。すなわち「引き分け(=同等)」と判断して良いと思います。
いかがでしたでしょうか。
何と言いますか、人によっては拍子抜けだったかもしれませんが、冷却力が同じとわかっていれば、心置きなく好きな方で取り付けられますし、結果的には良かったのではないでしょうか。
私はPushもPullも使ったことがあったので、デスクトップ画面に表示させているモニタリングソフトを見て差がないことに薄々気づいていましたが、きちんと環境を揃えて数値を記録していたわけではないので、改めて計測してスッキリしました。
この記事が本格水冷erの方に少しでも役に立ったら幸いです。
この他、本格水冷で実際に検証してみてほしい疑問などあれば、コメントやお問い合わせフォーム、プロフィール欄記載のメールやTwitterなどからご連絡いただければできる範囲で検証してみたいと思います。
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