作りたての本格水冷はクーラントの発色も良く、すごく綺麗ですが、時間経過とともに変色や汚れが発生します。今回は「自作PC 初めての本格水冷ガイド」シリーズ、第5弾としてメンテナンスについてご紹介します!
汚れの種類
メンテナンスの話に入る前にまずは本格水冷の天敵、汚れの種類をご紹介しておきます。
青水現象
経路内の銅イオンと不純物(脂肪酸あるいはアンモニア)が反応して青いゲル状の汚れが発生することがあります。
ちなみにアルミニウムイオンと反応した場合は白色ゲル状の汚れが発生するようです。
青水現象は放っておくと電蝕がさらに進行し、不純物(汚れ)が増え悪循環になることもあり早急に対処する必要があります。
私は過去に一度発生したことがあり、その時は写真のようにチューブ内側の淵に青い汚れが付着していました。
チューブの内側を洗浄するには一般的な「チューブ洗浄ブラシ」を使って洗えなくもないですが、チューブ経路が長いとブラシが届かなかったり、汚れをきちんと除去できていないとそれが原因となって、また発生してしまう可能性が高いので、新品のチューブに交換しましょう。
このときはリザーバの上部(空気部分)にも付着していました。
リザーバは形状にもよりますが、分解すれば比較的洗浄し易く、中性洗剤とスポンジや激落ちくん(メラミンスポンジ)で汚れを落とせば再利用可能です。
同様に水枕は分解清掃することで再利用可能です。
ラジエータについては分解清掃できないため、残念ながら新品へ交換するのが無難でしょう。
酸化(錆)
透明なアクリルカバーの水枕だと、銅あるいは銅製ニッケルメッキコーティングされた部分が赤褐色や黒色に変色して、汚れに見えることがあります。
これは錆(酸化銅)で、銅本体の腐蝕を抑制する保護被膜効果があるため放っておいてもそれほど問題ありません。
ピカールなどの研磨剤である程度の錆を落とすことができますが、購入当初の綺麗な状態まで戻すのは非常に難しいです。
どうしても見た目が気になる場合は新品へ交換してしまいましょう。
黄ばみ・変色
汚れとは違いますが、透明なソフトチューブだと半年程度で黄ばみが目立つようになってきますし、クーラントの発色も時間経過(主に紫外線の影響だと思われる)で色褪せてきます。
また、ハードチューブでもPETG素材の場合、ソフトチューブほどではないものの、色の沈着や黄ばみが徐々に目立つようになってきます。
下の写真は経路部分がPETGでリザーバや水枕はアクリルです。アクリルは色の沈着がなく、変色していませんがPETGは黄ばんでいるのがわかります。
チューブの黄ばみやクーラントの変色は性能に影響ありませんが、見た目が気になる場合、新しいものに交換しましょう。
クーラントの排出
パーツ交換やクーラントを入れ替える前に、まずは古いクーラントを排出する必要があります。
ボールバルブやクイックリリースなどを取り付けてあると簡単にクーラントを排出できるのでおススメです。
他にもメンテナンスを楽にするフィッティングがあるため詳細は以下を確認してみてください。
自作PC 初めての本格水冷ガイド③ パーツ選びのポイント - フィッティング
特にボールバルブは下の写真のように低い位置に取付けることで、ほとんどのクーラントを排出できます。
もしバルブなどのドレンを設けてない場合、経路上で最も低い位置のフィッティングを外して排出します。
当然ですが、PCは電源ユニットの主電源から落としておき、排出箇所の下には洗面器や桶のような受け皿を用意しておきましょう。
また、こぼれた場合に対処できるよう厚手のタオルも複数枚用意しておきましょう。
パーツの洗浄
あらかたクーラントを排出できたらパーツを取り外し、洗浄します。
水枕やリザーバは分解清掃が可能なので、汚れがある場合、中性洗剤とスポンジや激落ちくん(メラミンスポンジ)で落としましょう。
フィッティングは40℃程度の温水に中性洗剤を少量いれて付け置きが良いです。
ラジエータは温水を流し込んでプラグフィッティングでフタをし、シャカシャカと振って洗います。中性洗剤を使用しても良いですが泡が残りやすいためすすぎは入念に。
分解清掃やその後の組み直しが非常に手間なので、汚れや変色が発生する前にクーラントを交換してしまうのが一番楽です。(クーラントコストはかかりますが)
また、ちょっとした汚れでも気になるような人は、初めから透明でないパーツを選ぶほうが精神衛生上良いかもしれません。
クーラントの入替え
入替えといっても、古いクーラントを排出できていれば、新規構築したときと同じ手順でクーラントを入れ、循環させるだけです。
詳細はコチラ
自作PC 初めての本格水冷ガイド④ ソフトチューブループの作業手順 - クーラントの注水と循環
いかがでしたでしょうか。
本格水冷は簡易水冷のように「購入して取り付けておしまい」というわけにはいきませんし、簡単にメンテンナスする方法もありません。
ひとたび汚れてしまうと綺麗な状態に戻すのは非常に大変なので、いかに綺麗な状態を維持するか。そしてそのために構築前にしっかりとパーツを洗浄するのが重要だと思います。
私の経験上、あまり色の濃くないクーラントで3~6か月程度の頻度で入替えていけば、メンテナンスの都度パーツ洗浄しなくても、綺麗な状態をキープしやすいです。
下の写真は2017年7月に作成した本格水冷PCを2019年2月に撮影したものですが、分解清掃なし、半年ペースのクーラント交換だけで、目立った汚れはでていません。
ポイントとしては、できるだけクーラント入替が楽になるよう、ボールバルブを2ヵ所設けて、バルブを捻るだけでほぼすべてのクーラントを排出できるようにしているところです。
もしこれから本格水冷を作成するのであればメンテナンス性を考慮して、ドレンの位置も検討しておくと良いと思います。
この記事がこれから本格水冷を始める方の少しでも役に立ったら幸いです。
シリーズ記事
・自作PC 初めての本格水冷ガイド④ ソフトチューブループの作業手順
・自作PC 本格水冷ガイド Extra ハードチューブループの作業手順
・自作PC 本格水冷ガイド ExtraⅢ ラジエータファン Push? or Pull?